アルファルドの毒を受けたユルール。
その毒は、苦しむことなく全身の筋肉が緩んでいき、やがては呼吸が止まり死に至る。
シュトヘルに"虎の男"の来訪を告げ、アルファルドは玉音同を持ち一人北の宿駅へ向かいます。
残虐にして無慈悲な暴力…そんな"悪霊"に戻って欲しいというのがアルファルドの思いのようです。
毒で意識が朦朧としているユルールにシュトヘルは…
" おまえに恩があると言ったのに、まだ大事なことを言っていなかった。 "" …おまえに… " " おまえの救おうとしているものに—————救われたと。 "虎の男が来るからとその場を離れることができないというシュトヘルでしたが…
解毒剤を手に入れるために、アルファルドの後を追いかける。
モンゴル兵のいる宿駅にて一晩を過ごすアルファルドの元へ辿り着いたシュトヘル。
" …見たくないんだよそんな… 人間みたいな表情は…… "
" ——オレのほうを見てほしかったんじゃない… "" 血の匂いをさせて闇ばかり見てる狂った人殺し… だからきれいだったんだアンタは。 "" もう一歩だけ狂ってくれたら、——本当に愛したのに…シュトヘル! "モンゴル兵達も異常に気が付き、シュトヘルへ矢を放ちますが、アルファルドを盾にする。
シュトヘルがモンゴル兵を相手取る光景を死の淵で見ていたアルファルド。
その美しさに解毒剤を手渡し、シュトヘルの手で止めをさされることを望みます。
しかし、とどめを差す直前に一本の矢がアルファルドを貫きます。
その射手は…
虎の男。
遂に対峙する二人。しかし、ユルールのためにも時間をかけていることはできません。
シュトヘルと対峙して"虎の男"ハラバルは自分と似た物を彼女に感じます。
対して、ようやく仲間の仇である"虎の男"を殺せることに昂揚するシュトヘル。
そのシュトヘルにハラバルは"愉しいか"と問いかける。
" 穢らしい女だ。死者のために死者を作ってきただと。死臭はじきにおまえの内から吹き出すぞ。 "ハラバルの言葉に
" ——きさまも人殺しだろうが! "と逆上するシュトヘル。
ハラバルは…
" 愉しみ、喜んでいるのは人殺しのほかに能がなく、その能が役立っているからだ。 " " ゆえに俺も戦を喜んでいる。 似た者同士のようだな、悪霊。 "と。
しかし、二人の違いは…
" おまえはその人殺しの能を過去と死者のために捧げている。それもいつしか仇討ちのための殺しでなく殺しのための仇討ちとなり—— " " おまえは、己で築いた屍の山に埋もれていくだけだ。 "" 今日を生きる者のためでなければ、死屍を越えては往けないのだ。 "いつの間にか、彼らの周りに集まりっていたモンゴル兵達。
死を覚悟したシュトヘルはハラバルに嘆願します。
ユルールを殺さないでくれと…。
"頼む ユルールを殺さないでくれ。恩人だ。大事な人なんだ… " " ユルール… 生きなおさせようと…してく…れ…た…… "ハラバルはその望みを聞き入れ、ユルールの命を救います。
ユルールはハラバルにシュトヘルの命を救ってくれるように頼みますが…
" おまえは子供だ。卑怯も、——裏切りも許す。 "
" …ただ、恥だけは知っておけ。 "ハラバル達の後をつけて来る"呪い師"が、ハラバルに"悪霊"を殺すように進言してきます。
" その"悪霊"と——匿されし皇子を殺すのだ、 ツォグのハラバルよ! "" 殺さずおけば十年前よりも大きな災いが…そなたとその一族に降りかかる。 "と。
ツォグにユルールを連れ帰るハラバル。
ハラバルの父、族長はユルールをダシに大ハンとの謁見を目論んでいるようです。
一方、モンゴル軍本営にて大ハンにも"悪霊"捕縛の報告が届きます。
"悪霊"の名を遠い昔に耳にしたという大ハン。
ハラバルに"悪霊"を殺すように進言した呪い師こそがかつて、大ハンとなる前の"テムジン"に" "悪霊"と匿されし皇子に用心しろ"と進言した呪い師であったと。
さて、捕らえられたシュトヘルの処刑は翌日。
檻に閉じ込められ、辱められるシュトヘル。
彼女を救い出そうとユルールでしたが、一人で檻を破ることはできず…。
" ・・・——おれのきれいごとが・・・・・・ " " きみを殺すのか——シュトヘル。 "と涙を流すユルールに。。
" 違う。生き返らせてくれた。 "" 泣くなユルール。…ありがとう。 " " 文字を守れても守れなくても、おまえが大好きだ。 "そして、最後に西夏の子守唄を弾いてくれと頼むシュトヘル。
そして、日が昇り始め、ユルールに絶対に処刑を見に来るなと、そして忘れろというシュトヘル。
しかし何も返せていないというユルールにシュトヘルは馬頭琴の弦をくれるように頼み、それを飲み込みます。
" もう行け "" おまえの音が、そばにいてくれる。 "そして、処刑当日。
ハラバルの選んだ処刑法は絞殺刑。
"勇を示した者や貴人の処刑に際しては、その血を大地に吸わせない習い"だとか。。
" …仇はとれなかったけれど、ずいぶん来るのが遅れたけれど… 今日ここでわたしが、消えてもーー "" わたしたちのことは、憶えてくれる人がいたから。 もうそっち側に——皆に会いに行かせてくれ。 "死を覚悟し、先に逝った仲間に心の中で語りかけるシュトヘル。
しかし、彼女の見上げた先には…
ユルール。
矢を放った時点で自分の庇護下を出ると、一族を敵に回したと判断するとユルールに言い放つハラバル。
ユルールは迷うことなく、矢を放ちます。
その矢はシュトヘルを吊るす縄をかすめるものの切るには至らず…。
一方ユルールを一族の敵と見なしたハラバル達。
その状況に激しく後悔するシュトヘル
" ——あきらめなければよかった。せめて、諾々と吊るされる前に抗って死ねばよかった。"" 疲れて、あきらめていい理由をユルールに押しつけて、——また卑怯者になっていた。 "
" ユルールが斬られる。わたしが卑怯だったせいで。 こんな命ひとつを、あきらめないでいてくれたせいで—— "しかし、無情にも吊るし上げられ、シュトヘルの意識は途絶えます。。
その瞬間、須藤が現実世界で目を覚まし…。
目覚めた須藤が吐き出したものは…馬頭琴の弦。
鈴木さんも転校してから須藤と同様に、毎晩のようにシュトヘル達の夢を見ていたようです。
須藤とは何だか違うように思うのですが…。
個人的には須藤の場合とは逆に鈴木さんの身体にユルールが乗り移っているような。。
再び眠りについた鈴木さんを家においたまま、外へ出た須藤は漫画喫茶へ行きインターネットで西夏とその文字を検索します。
それにより、ユルールが実在していたと確信した須藤は、ユルールが無事に大人になり、その子孫が鈴木さんにまで行き着いたと感動しながら家へと戻る。。
しかし、そこに鈴木さんの姿はなく、学校で聞いても誰も憶えていない。
学校帰り、再び漫画喫茶へよった須藤は、西夏と検索しても何も出てこないことを知ります。
おそらく、須藤はシュトヘルの子孫なのだと。。
ならば自分は何故ここにいるのかと、そう考えた須藤は再びあの時代へ戻ることを選びます。
そして、再び馬頭琴の音色と共にシュトヘルとしてユルールの元へ….。
しかし、須藤がシュトヘルではないとすぐに見抜いたユルール。
そのとき、モンゴル軍の追撃を受けることに…。
モンゴル兵を殺す須藤。
確実にシュトヘルはその身体の中にまだいると感じてた須藤でしたが、それはユルールさえ忘れた"憎しみだけ"だとも同時に感じ取ってしまいます。
ユルールは須藤のことを"スドー"と呼び、共に旅をすることに。
その道中にて、西夏の方角から煙が…。
遂に番大学院が焼かれ、本が失われる。
遂にユルールの背に西夏文字の命運が託された…。
と、同時に須藤の考えがあっていたということなのでしょうかね。
おそらくあのままならシュトヘルの死によって、ユルールも死んでいたんでしょうね。
そして、番大学院をやくハラバルの元へ大ハンからの伝言が…
敵側も遂に、玉音同の存在を知り、本格的にユルールを追いかけることに。。
鈴木さんと須藤との違いはなんなんでしょうね。
なぜ鈴木さんは須藤のことをシュトヘルとよんでいたのか?
彼らの回想においては鈴木さんがユルールに乗り移ったこともないようでしたし、そもそもユルールは死んでもないですし。
ただ夢をみていただけであれほどまでに感情移入できるものなんですかね。。
それに、なぜシュトヘルが死んで、鈴木さんが消えて、須藤がそのままだったのか…。
まあ、須藤が選択しなければ鈴木さんの存在が消えるわけですから…まあ…とも言えるのですが。
須藤が選択しなければシュトヘルの死は変わることがなく、須藤が存在することもなくなるのでは…など、いわゆるタイムパラドックスの問題ですがね。。
もしかすると須藤はシュトヘルの子孫ではないのかもしれませんね。。
それから、なぜシュトヘルの飲み込んだ弦が須藤が吐き出したのか…。
いろいろと謎の深まる第3巻でしたね。
さらに、大ハンも動き出して…波瀾万丈な予感。。
しかし、鈴木さんがユルールの子孫で、須藤がシュトヘルの子孫ならユルールとシュトヘルが結ばれることはないんですね。
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