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『シュトヘル』第1巻 レビュー・感想です。
シュトヘル(1) ビッグコミックススペシャル" 文字は生き物みたいだ。 "
" 記した人の思い ねがいを伝えようとする。 その人が死んでも 文字は、 "
" 託された 願いを抱きしめているようで… "作品評価:
★★★★★[0回]
" 伝えられないことばが… " " 砦じゅうに渦巻いている— 火の粉の数ほど… "毎日の様に、火が燃え、人が死ぬリアルな戦の夢をみる須藤。
転校生の鈴木さんと出会い…。
バイオリン作りの親をもつ須藤。彼の家に散らばる造りかけのバイオリン。
その中に唯一つだけ須藤の造った楽器。
" このなんかヘンなやつだけ 他のと違うしヘタなのかねオレ。 "その楽器を目にしたとき、突然触れさせてくれと言う鈴木さん。
弦も張っていないその楽器、"馬頭琴"を手にとり弾いているかの様に…。
涙を流しつつ鈴木さんが発した言葉…。
" シュトヘル… "その瞬間…。
須藤の意識は…。
次の瞬間、毎日の様に見ていた夢の舞台、13世紀モンゴルにて、絞首刑に処された女性として目覚めた須藤。
その女性こそがモンゴル軍から"悪霊"として恐れられた女戦士"シュトヘル"。。
そして須藤は彼女の死体を弔うためにやってきた、鈴木さんそっくりの少年"ユルール"と出会う。
"シュトヘル"の生存に涙して喜ぶユルール。
しかし、再会もそこそこに、処刑し損ねたと再びモンゴル軍の兵隊が襲って来る。
その瞬間、須藤の身体が
襲ってきたモンゴル兵達を瞬く間に斬殺する。。
人を殺したことに大きな衝撃を受ける須藤。
"平気なのか?目の前で、人が死んで平気なのか?""人を、殺した…"ユルールとその付き人"ポルドゥ"とが身を隠していた隠れ家に須藤を連れ帰り…。
"シュトヘル"が記憶を失ったのだと考えたユルールは須藤に"これまでこと"を語り始める。。
"敵は、おれの一族だ。""さあ、長い話を始めよう。"ユルールはモンゴルの傘下につくツォグ族の族長の息子。
その名"ユルール"は"祝福"を意味する。
この時代モンゴルによる西夏国への侵攻が続いていた。
ユルールには
"神箭手(メルゲン)"と呼ばれる兄ハラバルがおり、ツォグ族はハラバルの力で次々と州を攻め落とし、功を上げていた。
この時代、戦の勝者は敗者の全てを焼き払う、文字や文化までも。。
草原の民に生まれながら、文字を愛し、馬頭琴を好むユルールは、文字が焼かれることに心を痛める。
" 文字は生き物みたいだ。 "
" 記した人の思い ねがいを伝えようとする。 その人が死んでも 文字は、 "
" 託された 願いを抱きしめているようで… "
"生き物みたいだ。""焼かれると、つらい。" ツォグ族の次の侵攻先は霊州。
そこを守る兵達の中にひとり女性の兵士「ウィソ(すずめ)」…。
"悪霊"と化す前の"シュトヘル"。
ハラバル率いるツォグの軍勢を前になす術もなく、殺されていく仲間たち。
皆の退路を守ろうと、非力ながら命を抛って足止めになろうとする「すずめ」でしたが、唯一の退路と思われた「北門」は敵の罠で、先回りしたハラバルらによって全滅。
なんとか生き残り、仲間との約束の場所「興州」へ向かうために「北門」を通り抜けた「すずめ」が目にしたものは…
矢によって壁に晒された仲間達の死体と、その血で書かれた"虎"。。
皮肉にも、唯一人生き残ってしまった「すずめ」。
"—疲れただろうなあ、屈漢。もう、横になりたいだろうなあ…"
"この期に及んでも役に立たないなんて。"矢を抜くことが出来ず、仲間を誰一人壁から降ろしてやることも出来ない「すずめ」。
己の無力さに涙する「すずめ」ですが、自然は彼女を待ってはくれません。
血の匂いに、集まってきた狼達。
仲間達の遺体を守るために狼を撃退する「すずめ」。
"今度こそは、最後までいっしょにいる。"
"今度こそは。"月日は経ち…
北門には依然壁に張り付けられたまま遺体と、転がる狼達の無数の死体。
遺体は既に朽ち果て、面影すらも残っていない。。
それでも尚、仲間の遺体を守り続けるために狼と戦い続ける「すずめ」。
その姿にはかつての気弱で非力だった「すずめ」のおもかげは既になく…
その目は…
彼女に語りかける狼の王。
" めす猿よ…めす猿よ。 "
" なぜ殺す。 —われわれは食事を望んだだけだ。 "そして、王は続けます。
" すべては消えるのだ。腹に収めてやるのがせいぜいのこと… "それに対して、彼女は叫び返す。。
" ——消えてない! "
" 顔も名前も、どう生きて、どう死んだかも、 "" わたしが覚えている… "王は更に問いかけます。
" では おまえの死んだ後は? "と。。
王は、彼女に自分達は「仇」ではないと。
" すべては消えるのだ。 "しかし、「妻」を殺してしまった彼女は王にとっての「仇」だと。
王の妻を盾に、なんとか王の息の根を止めるにいたる。
" ——死んだものは、喰らうだけじゃなかったのか? "死の淵にて王は…
" めす猿よ。おまえの卑劣を、生きるための卑劣ゆえに許そう。 "" …ここで… "" 死者と添いながら死者となるより、殺しながらむなしく生きることを選ぶのならば—— "" そのための仇を求めるのならば——それはわれわれではなかったのだ、めす猿よ。 "
" …行け… "" ここにはもう——死が、ある、のみだ…… ""生きるため"という言葉を反芻する"彼女"。。
確かに、このとき狼の王は仲間たちの死体を食べにきているわけではありませんからね。。
無意識のうちに"生きる"ことを選んでいた"彼女"…。
狼の王の言葉に"虎の男"を仇と見据える…。
狼の王との対話を経て、"彼女"は憎しみと共に「すずめ」は「悪霊」へ…。
一方、ハラバルの実母の国である興慶をも焼くというツォグ族に反発を感じるユルール。
" お前は一族に与えられた祝福だ。ちがどうであれ俺の弟だ。 "" おまえは戦ぎらいでいい。血も、火も見なくていい。 "" それは、俺がやる。 "兄に守られて生きてきたユルール。
しかし、彼は…
葛藤の末、一族を裏切り、興慶へ向かおうとするユルール。
その前に立ちはだかる老人"ポルドゥ"。
ハラバルの母"玉花"が西夏から嫁いできた際に下男としてやってきた男。
ポルドゥに語るユルール。
" …西夏の人ならわかるはずだ。玉花かあさんの——あなたがたの国の、あの文字の美しさを。 "" 草原には文字はない。 "" ——文字は、人を覚えておくために生まれた。 "" 遠くにあっても、時を越えても、人と人とが交わした心を伝え続ける…… "" だから、心底美しい。おれはあこがれる—— "如何にして、西夏の文字を守るのかというポルドゥの問いに…。
辞典を保護するというユルール。
文字そのもの失われない限り、その文字の本がまた生まれる…と、
ユルールが脱走すれば、使用人は斬首されるものもあるかもしれないと提言するポルドゥ。。
それでもユルールは…
ユルールの覚悟にポルドゥは、西夏の魂をユルールに託すことを決める。
それは…
"この玉版一枚に六五四文字、九枚で五八八六文字。""大夏文字誕生のとき刻まれた"玉音同———"" "大夏の魂です。" その歴史と魂とを背負う決意をしたユルールは…。
文字の美しさと、その大切さを伝える本作。
なんと言っていいか…。とりあえずすばらしいの一言ですね。
なんというか凄惨ではありますか、美しいものがたりだと思います。
交互に語られる「ユルール」と「すずめ」の物語。
狼の王の
"では おまえの死んだ後は?"
という問いが非常に印象的でしたね。
その問いの答となるのがこの漫画の主題とも言えるであろうユルールの言葉
"——文字は、人を覚えておくために生まれた。"
"遠くにあっても、時を越えても、人と人とが交わした心を伝え続ける……"
"だから、心底美しい。おれはあこがれる——"
憎しみによって「すずめ」から"悪霊" "シュトヘル"へと変わってしまった彼女にとって、"ユルール "は本当の意味で"祝福"であるのかもしれませんね。
改めて"文字"というものの大切さありがたさを考えさせられます。
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